白澤社創業にあたって
今、私たちは困難な時代を生きています。この時期にあえて出版活動を始めた小社が自らのシンボルとして選んだ「白澤」とは、中国の伝説に登場する人語を解し天下の鬼神に精通していたという神獣です。伝説によると、昔、白澤に出会った黄帝は、その語るところを書き取らせ、人々が鬼神の怪を避け害を除くよう天下に示した、と伝えられています。このとき黄帝が書き取らせたとされる書物『白澤図』は、その原本は今では散逸してしまいましたが、残された断片によると、鬼神の形状を記した後、その名前を呼んで福を授かったり、災いから逃れたりする方法が書かれていたようです。ここから察するに白澤が黄帝に教えたのは知識と言葉、情報と概念によって、怪しいものごとを明らかにし、それによって災いを防ぐことだったのでしょう。もちろん、一方的に名付けられ、あるいは名前を暴かれることによって無力化され利用される側から見れば、知識と言葉は暴力であり権力であることを忘れるわけにはいきません。しかし、未開の地を手探りで切り開き、困難と危険に立ち向かった古代の人々にとって、白澤の伝えた知識と言葉が生きていくための力となったのも事実でしょう。
私たちが、この困難な時代を生きていくための力とすることのできるものは知識と言葉のほかはありません。たとえそれが無垢なるものではないとしても、もはやほかに途がない以上、その責任をあえて引き受けた知識と言葉を、必要とする人々のもとに届けるべく、私たちは白澤社を創業いたしました。
願わくば、この時代の困難と危険に、それぞれの場から立ち向かっている人々のもとに、白澤の言葉が届き、怪を避け、害を除く一助となりますように。
2001年5月吉日
会社案内
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