フェミニズム的転回叢書
フェミニズム的転回
ジェンダー・クリティークの可能性

著者
大越愛子・志水紀代子・持田季未子・井桁碧・藤目ゆき(著)
定価
1,980円(本体1,800円)
体裁
四六判・並製・240頁
ISBNコード
978-4-7684-7901-8
発売日
2001年5月
在庫
在庫僅少

内容紹介

 今なおフェミニズムは「女」の状況を変えうるのか。それともすでに有効性は失われているのか。
 フェミニズムによって導入されたジェンダー観点は、時々刻々立ち現れてくる支配的な観念や絶対だと信じられている真理を、流動化する大きな力となってきた。さらにそうして生み出された流れを、観念にとどめることなく社会的現実に転化するための思考的実践が必要なのである。「フェミニズム的転回」叢書創刊第1巻目の本書は、哲学、倫理学、美学、宗教民俗学、歴史学の各分野で活躍する著者たちによる刺激的なジェンダー批評の実践である。

著者略歴

(※著者略歴は本書発行時のものです。)
■大越愛子(おおごし あいこ)
1946年生まれ、近畿大学文芸学部教授。女性学・哲学・宗教学専攻。主な著書に『フェミニズム入門』(筑摩書房)、『女性と宗教』(岩波書店)、『ジェンダー化する哲学』(共編著、昭和堂)、『加害の精神構造と戦後責任』(責任編集・著、緑風出版)など。
■志水紀代子(しみず きよこ)
1940年生まれ。追手門学院大学人間学部教授。人間学(哲学、倫理学)・女性学専攻。主な著書に『ジェンダー化する哲学』(共編著、昭和堂)、『ハンナ・アーレントとフェミニズム——フェミニストたちはアーレントをどう理解したか』(共訳書、未来社)など。
■持田季未子(もちだ きみこ)
1947年生まれ。大妻女子大学比較文化学部教授。美学・芸術論専攻。主な著書に『芸術と宗教』、『絵画の思考』(以上、岩波書店)、『生成の詩学』(新曜社)、『希望の倫理学』(平凡社)など。
■井桁 碧(いげた みどり)
1946年生まれ。筑波女子大学国際学部助教授。宗教社会学・ジェンダー論専攻。主な著書に『宗教の中の女性史』(共著、青弓社)、『女神』(共著、平凡社)、『「日本」国家と女』(編著書、青弓社)など。
■藤目ゆき(ふじめ ゆき)
1959年生まれ。大阪外国語大学外国語学部助教授。日本近現代史・女性史専攻。著書に『性の歴史学』(不二出版)、訳書に『ある日本軍「慰安婦」の回想』(マリア・ロサ・L・ヘンソン著、岩波書店)など。

目次

第1章 フェミニズム的転回のとき(大越愛子)
 鶴見俊輔のジェンダー論/吉本隆明の対幻想論/全共闘知識人たちの他者の欠落 他
第2章 倫理学とジェンダーの視点(志水紀代子)
 従来の倫理学の限界/アイヒマン裁判のインパクト/アーレントのコペルニクス的転回 他
第3章 美的判断力の可能性(持田季未子)
 芸術関連の諸学はいま/「美と崇高」から/フェミニストによるカント批判/美学としてではなく 他
第4章 「日本」論という思想(井桁碧)
 共同体に違和するフェミニズム/「みんな」の学校・ジェンダー化する学校/柳田國男の「日本」 他
第5章 女性史研究と性暴力パラダイム(藤目ゆき)
 公娼制度・廃娼運動史研究をめぐって/日本軍「慰安婦」問題をめぐって/セックス・ワークをめぐって/現代の軍隊と性暴力をめぐって 他

書評/紹介情報

「信濃毎日」2001年6月3日読書面:「脈々と生きる巨大な破壊力」(評:森岡正博)
「情況」2001年8・9月号「書評」(評:奥田暁子)
「アソシエ」2006年7月号「書評」(評:田中雅一)