安政コロリ流行記
幕末江戸の感染症と流言

著者
仮名垣魯文=原著 篠原 進=巻頭言/門脇大=翻刻・現代語訳/ 今井秀和・佐々木聡=解説/ 周防一平・広坂朋信=注
定価
1,980円(本体1,800円)
体裁
四六判・並製・160頁
ISBNコード
978-4-7684-7985-8
発売日
2021年5月
在庫
有り

内容紹介

幕末に未知の感染症に襲われ多くの死者を出した大都市江戸の混乱と不安を虚実とりまぜて活写した仮名垣魯文の『安政箇労痢流行記』。本書はその原文と現代語訳を収めるとともに、当時、江戸市中で語られた感染症にまつわる流言や怪事件の記録から江戸後期の疫病観を分析した解説を併載。疫病禍に直面した江戸の人々の姿から現代の課題が浮かび上がる。

著者略歴

【原著者】仮名垣魯文(かながき ろぶん)
文政12(1829)年江戸生れ、1894(明治27)年没。幕末から明治初期に活躍した戯作者、新聞記者。本名野崎文蔵。別号、鈍亭など。明治期の『西洋道中膝栗毛』、『安愚楽鍋(あぐらなべ)』などが代表作。また、『仮名読新聞』、『いろは新聞』などを創刊・主宰、新聞記者として活躍。「続き物」で新聞小説の土台をつくった。
【巻頭言】篠原 進(しのはら すすむ)
青山学院大学名誉教授。専門は日本近世文学。編著書に『ことばの魔術師 西鶴』(共編、ひつじ書房)、「江戸のコラボレーション──八文字屋本の宝暦明和」(『国語と国文学』2003年5月)、「二つの笑い──『新可笑記』と寓言」(同2008年6月)。『新選百物語』(監修、白澤社)など。
【翻刻・現代語訳】門脇 大(かどわき だい)
1982年島根県生まれ。神戸大学大学院人文学研究科博士課程修了。専攻は日本近世文学。香川高等専門学校講師。論文に、「怪火の究明──人魂・火の化物」(堤邦彦・鈴木堅弘編『俗化する宗教表象と明治時代 縁起・絵伝・怪異』三弥井書店)など。
【解説】
今井秀和(いまい ひでかず) (序・三〈解説1〉)
1979年東京都生まれ。大東文化大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専攻は日本近世文学、民俗学、比較文化論。大東文化大学非常勤講師、蓮花寺佛教研究所研究員。著書に『天狗にさらわれた少年──抄訳仙境異聞』(訳・解説、KADOKAWA)、『異世界と転生の江戸──平田篤胤と松浦静山』(白澤社)など。
佐々木 聡(ささき さとし) (四〈解説2〉)
1982年秋田県生まれ。金沢大学文学部卒、東北大学博士課程後期修了。博士(文学)。金沢学院大学講師。主な著書に、『復元 白沢図──古代中国の妖怪と辟邪文化』(白澤社)、東アジア恠異学会編『怪異学入門』(共著、岩田書院)など。

目次

巻頭言 江戸のネコ歩き──安政の魯文(篠原 進)
序 コロリ禍の中で(今井秀和)
一 仮名垣魯文『安政箇労痢流行記』(門脇 大=翻刻)
二 『安政箇労痢流行記』現代語訳(門脇 大=現代語訳)
三 〈解説1〉コロリ表象と怪異(今井秀和)
四 〈解説2〉大尾に置かれた白沢図とその意味(佐々木 聡)

書評/紹介情報

『毎日新聞』2021年7月10日書評面:「「尾ひれ」こそ人間社会の本質」(評・国際日本文化研究センター 磯田道史 教授)
『讀賣新聞』2021年7月18日書評面:「疫病の恐怖 江戸の知恵」(評・作家 木内昇さん)