私的判決論
人々の権利の実現をめざして

著者
中島 光孝
定価
3,740円(本体3,400円)
体裁
四六判並製、336頁
ISBNコード
978-4-7684-8006-9
発売日
2025年6月
ジャンル
在庫
有り

内容紹介

「訴訟は、生きる力を回復するための権力や権威にあらがう実践である」。
弁護士として30年以上、非正規格差、労働組合弾圧、政教分離などの訴訟に携わってきた著者が、代理人となった訴訟のうち、13の判決を取り上げ、自身の体験も交えながら、判決に至る過程や関与した人々の苦闘や思想に迫る。
第一部は最高裁で弁論期日が開かれた労働格差是正への判例法理を形成するハマキョウレックス事件や、政教分離にかかわる空知太神社事件最高裁判決、被害者救済を求めた水俣病訴訟。
第二部では、「強制連行」の事実を日本の裁判所が認めた大阪・花岡中国人強制連行国賠請求事件大阪地裁判決、台湾原住民族が自らの歴史を取り戻す活動の一環として起こした訴訟で画期的な成果をあげた台湾靖国訴訟大阪高裁判決のほか、故安倍元首相の歴史観に対峙する形となった訴訟三件。
第三部では、労基法上の労働時間を定義づける判決として先例的価値が高い三菱長崎造船所事件最高裁判決、労組法上の「使用者」概念を拡大する判決となった住友ゴム工業(兵庫県労委)事件大阪高裁判決、アスベストに関わる健康被害にかかわる住友ゴム工業(アスベスト)事件大阪高裁判決と近鉄高架下文具店長事件最高裁判決、産業別労働組合への刑事弾圧事件である関西生コン支部和歌山事件大阪高裁判決、関西生コン支部コンプラ事件大津地裁判決について論じる。

著者略歴

中島 光孝(なかじま みつのり)
1949年北海道生まれ。製鉄所勤務後北海道大学卒業。金融機関勤務を経て1993年から弁護士。2004年、大阪に法律事務所を開設。同志社大学法科大学院、立命館大学法科大学院、大阪市立大学大学院、関西大学などの講師も務める。2022年、札幌に法律事務所を開設。札幌弁護士会、日本労働弁護団、大阪労働者弁護団等に所属。
 著書に『還我祖霊──台湾原住民族と靖国神社』(白澤社)、『Q&A 労働者視点でめざす同一労働同一賃金 最高裁判決を踏まえた交渉・手続のポイント』(日本加除出版)など。監修に『弁護士・社労士・税理士が書いた Q&A 労働事件と労働保険・社会保険・税金』(共監修、日本加除出版)、など。

目次

第一部 弁論が開かれた最高裁判決
 第一章 ハマキョウレックス事件、日本郵便〔西日本〕事件──「非正規格差」をどう是正するか
 第二章 空知太神社事件最高裁判決──政教分離原則違反はだれがどのような基準で判断すべきか
 第三章 水俣病訴訟──公害企業救済か被害者救済か
第二部 「戦争」にまつわる判決
 第四章 大阪・花岡中国人強制連行国賠請求訴訟──国家の「強制」による「加害」を国家はいかに償うべきか
 第五章 台湾靖国訴訟・小泉靖国訴訟──台湾原住民族はなぜ「靖国合祀」を拒否するか
 第六章 「アベ的なるもの」との三〇年──フィリピン元「従軍慰安婦」補償請求訴訟/「君が代」斉唱拒否訴訟/安倍国葬違法支出公費返還請求住民訴訟
第三部 労働組合をめぐる判決
 第七章 三菱重工長崎造船所〔労働時間〕事件──「労働と労働組合活動」を考える
 第八章 住友ゴム工業事件・近鉄高架下文具店長事件──「職場の労働組合活動」を考える
 第九章 関西生コン支部刑事弾圧事件──「労働基本権保障」の意味を考える
索引